スタッフダイアリー

今年の春はきっと

寒さの厳しい冬が長引くと

春にひろげた花片が

いつもより力強く外に向かって咲いているように感じます。





この花は。。。秋桜(コスモス)ですね。


そうなんです、これは少し前に撮影したものです。


この花は2011年3月11日に大きな地震と津波の被害をうけ


多くの尊い命が失われた、宮城県南三陸町の一角に咲いていたコスモスです。


そのころ、私はあるボランティアグループと現地へ行く機会がありました。


40名あまりの仲間が車や物資を持ち寄り、400キロ先のその町をめざし


ただひたすら、漆黒の東北道に車を走らせました。





朝日を横にうけながらくねくねと続く海岸線を進み


点在する民家を横目に30分くらい走った時でしょうか


目の前が開け、そこには言葉を失うほどのいままでに見たことのない


破壊し尽くされた町の光景が広がっていました。





主人を失った原型をとどめない車たち


あるばずのない場所に流されてきた民家


津波の威力でねじ曲がった鋼鉄の水門


流される瞬間まで防災無線で呼びかけ続けた女性のいたあの建物


このときカメラのファインダーを見ながら


「被写体がないからシャッターが切れない」


と思うくらい、すべてが破壊され流されていました。



仮設住宅群のある小高い丘につくと


東北の秋の風とは思えないほど暖かな風が吹く中


東京から運んだイベント用テントを組み立て


子供向けのプレイブースを設置し


ウィンドオーケストラによる演奏をさせてもらいました。







この震災の後には、演奏会なんて不謹慎だ、被災者への押しつけだ


といった意見もあり、音楽関係者を含めイベント関係者にとっては厳しい年になりましたが。


そんな中、ボランティアの演奏を聴いてくださった一人の年配の女性が


演奏後にスタッフのところにいらして


「まだまだ少しですが、心の整理ができました。ありがとうございました。」


と涙を流しながら仰っていたそうです。





帰りの道は塩釜港の夕日を眺め


クタクタになった身体を荷台に投げ出し


あっというまに心地よい疲れと共に夢の中でした。



まだまだ、寒い日が続きますが


今年の春はきっと


南三陸町にも


そのほかの被災した町にも


そして日本全国にも


力強く春の花が咲いてくれることを


こころより祈っております。



プログラマー 笠原