スタッフダイアリー

キナバル山登頂レポート(後編)

システム課のかさはらです。


前回に引き続き目指すはマレーシア、コタキナバルにあるキナバル山頂上。
←前編はこちらからどうぞ。


前編では山にまったく触れずに終わってしまったので、ちょっとキナバル山についてお話します。


キナバル山はマレーシア最高峰、標高4095m、ボルネオ島北部に位置して、ユネスコの世界遺産に指定されているキナバル自然公園内にあります。公園を利用する人や登山者は管理棟で登録をおこない入山料を払います。登山者には途中の山小屋で最低1泊の滞在とガイドの利用が義務づけられており、地域の雇用をつくりだし観光と地域生活の共存を考えて公園が運営されています。キナバル周辺は世界でも有数の生物多様性に富んでいて、外国の生物学者達も調査に訪れる有名なスッポットです。実際に登山の途中で学者さん達のパーティーに出会いました。麓は熱帯雨林特有のジャングルで、鬱蒼(うっそう)と生い茂る木々の間には食虫植物で有名なウツボカズラがぶら下がっていました。また世界最大の花といわれるラフレシアもこのジャングルのどこかに生息しているそうです。火山の隆起で出来たこの山は、ボルネオ島のジャングルの中にズンっと岩の頭を突き出して立っています。森林限界を超えた頂上付近では高温の溶岩が流れて冷えて固まり、一枚岩の上に規則正しい模様となって幻想的な世界を創り出していました。







さて、山の説明が済んだところで、3272mに位置する天空の宿・ラバンラタンからはじめたいと思います。

■ラバンラタン


朝8時にTimpohonGateをスタート。熱帯雨林の山道を歩き、途中の小屋でランチを済ませます。メニューは紙のトレーに入ったサンドウィッチとリンゴ1個。ラバンラタンには午後1時に到着。正式名称はラバンラタン・レストハウス。日本からネット見た感じはもっと質素な山小屋だと思っていましたが、実際には綺麗なシーツに包まれた2段ベッド、シャワー(←超冷たい水です)、食堂も完備された快適な山ホテルでした。さすがに国をあげて運営しているだけのことはあります。南アルプスの北岳山荘に初めていった時に、こんな山の上で生ビールをジョッキで飲めるんだなぁと感動しましたが、ラバラタンの設備にはもっと驚かされました。







■アタック開始


就寝20時、午前2時起床、アタック開始です。標高も同じくらいということもあり行動予定は富士登山と同じです。ここから約800mを2時間で登り、4時過ぎくらいに山頂に着いて日の出を待ちます。天候もよく星が綺麗に見えました。大気が穏やかで風も雲もない絶好のコンディションです。歩き始めて1分、(;´Д`)ハァハァ 苦しい!高所での寝起き直後は体中に酸素を送る準備が不十分で、酸素も薄いので頭がふわふわして脚がふらつきやすくなります。太ももや背中の大きな筋肉に意識的にちからを入れ、吸い込んだ空気を肺の中で圧縮するイメージで胸にちからを入れることで酸素の運搬と供給量をアップします。3800mを過ぎたあたりで、山頂に雲がかかっているのがわかりました。ガイドさん曰わく、山頂は雨が降っているだろうと。あらら、ここまで天気が良かっただけに残念ですがとりあえず頂上を目指します。
やはり山頂は雲の中。 風雨で体感温度はマイナス10度。(言い過ぎかな、でもそのくらい寒かったです)
狭い頂上付近は大渋滞で、横殴りの雨の中でかろうじて一枚だけ写真を撮ることができました。寒さで顔がひきつっています。
北アルプスの奥穂高の時も雨降っていたなぁ。。。もしかして雨男!?
なんにせよ初の海外登山を単独で達成!ローズピーク4095m制覇です!








■霧の中


一番標高の高いローズピークを後にして、ガイドと早々に下山を始めて、雲を出たのが幸いしまして、正面に綺麗な日の出を拝むこともできました。ローズピークの反対側にはサウスピーク(3930m)も見えました。
霧の中で朝日に照らされたサウスピークがまるで雲の中に浮かんでいるようでとても感動的な光景でした。









■帰り道は


いろいろと俗社会への欲望がふつふつと蘇ってきます。マック食べたい。暖かい風呂に入りたい。マッサージ行きたい。ヒゲも剃りたいし、べとべとの髪も洗いたい。下山する時は毎度こんな感じです。
しかし頑張って登った分だけ降りるのも半端じゃない距離があります。いっそのことパラシュートを付けてジャンプしたほうが早そうな断崖絶壁もあるのですが、そんなことも出来るわけがなく。仕方なくまた一歩一歩と脚を前に出すのです。下りは登りよりも脚に掛かる負担が大きいので、なるべく体力と気力が残っている状態で早めに距離を稼ぎ下山します。登り始めたTimpohonGateに到着してガイドが一言ボソッとつぶやいていました。『あんたでよかったよ』と。 何のことかと思って話を聞いてみると、登山者の中には凄く時間が掛かる人達がいるので、週2,3回も上り下りしているガイドさん達にとっては、時間を掛けて上り下りするほうがよっぽどキツイとのことでした。『わかる気がします…』、それにしても月に2,3回ではなくて、週に2,3回って凄すぎます。









今回の日程は下記の様になっています。現地滞在が3日ほどしかなかったのですが充実した山登りになりました。今度は一眼レフカメラをもってゆっくりボルネオの自然を撮りに訪れたいと思います。皆さんも機会があったらぜひ行って見てください。本当のところ、ゆっくり登って防寒対策さえあれば、富士山より簡単な楽々の山でした。(笑)


◆山行日程
9/15 羽田(HND)⇒クアラルンプール(KUL)
9/16 クアラルンプール(KUL)⇒コタ・キナバル(BKI)
9/17 8:00 ティンポホンゲート登山口(Timpohon Gate)からキナバル登山開始。
   13:00 ラバンラタ・レストハウス(標高3272.7m)到着
9/18 2:00 山頂にアタック
   4:30 ロウズ・ピーク(山頂)に到着(標高4,095m)
   6:30 ラバンラタ・レストハウスへ戻る
   7:30 朝食をとり、ラバンラタ・レストハウスを出発。
   11:30 ティンポホンゲート登山口(Timpohon Gate)到着
   13:30 コタ・キナバル市内のホテルへ
9/19 コタ・キナバル(BKI)⇒クアラルンプール(KUL)
   22:00⇒羽田(HND)着

次回は、雪解けのあとに北アルプスの槍ヶ岳へ挑戦します!